ニューズレター


2024.Nov vol.120

自治会への加入義務とゴミ捨て場の使用について


不動産業界:2024.Nov vol.120掲載

この度、賃貸目的のアパートを建てることにしたのですが、アパートが所在する地域を管轄する自治会の会長から、サブリース先の不動産業者を介して、以下のような連絡がありました。

「従前より、自治会が管轄する地域の住民は、全員自治会に加入する決まりになっている。ついては、アパートの入居者も自治会に加入してほしい。自治会に加入しないのであれば、自治会が管理・所有するゴミ捨て場の使用を認めない。」

ゴミ捨て場の使用が禁止されてしまうと、アパートの敷地内にゴミ捨て場を設置し、回収業者も手配する必要があるかもしれません。そもそも、自治会には絶対に加入しなければいけないのでしょうか。加入する義務がないとしても、自治会側のゴミ捨て場を一切使用させないやり方に何か対抗できないでしょうか。


自治会は任意加入団体であり、法的に加入する義務はありませんので、アパートの入居者は自治会に加入する必要はありません。

他方で、自治会に加入していないにもかかわらず、無断で自治会が所有するゴミ捨て場を使用することは、自治会のゴミ捨て場の所有権を侵害する行為にあたる可能性があります。

オーナー様におかれては、自治会に対し、加入しない代わりにゴミ捨て場使用料を支払う等の折衷案をもって、ゴミ捨て場の使用を承諾するように交渉することも一案です。万一、自治会が一切の妥協案に応じない場合には、行政に相談の上、戸別収集を求めたりすることも考えられます。

以下、詳しくみていきましょう。

さらに詳しく

1.自治会への加入義務について

自治会とは、市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて設立され、地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行う団体です。

自治会の加入義務の有無について、判例(最判平成17年4月26日)は、「被上告人(自治会)は、…会員相互の福祉・助け合いを行うことを目的として設立された権利能力のない社団であり、いわゆる強制加入団体でもなく…いつでも…被上告人を退会することができると解する…。」と述べ、自治会へ加入する法的義務は存在しないと判断しています。

他の事案では、自治会側が上記判例に反して、自治会に加入する法的義務があると偽る等して、執拗に自治会への加入を求めた行為につき、損害賠償請求が認められたものもあります(福岡高判平成26年2月18日)。

2.ゴミ捨て場の使用について

自治会に加入する法的義務がないとしても、自治会に加入せずに自治会が所有するゴミ捨て場を無断で使用してしまうと、自治会が所有するゴミ捨て場の所有権を侵害していると主張されるおそれがあります。

そこで、オーナー様としては、自治会に加入しない代わりにゴミ捨て場の使用料に相当する金額を自治会に支払うとして、ゴミ捨て場の使用許諾が得られるように自治会と交渉することが考えられます。しかし、自治会側に妥協案を提案しても一切交渉に応じない場合、オーナー様としては、行政に対し、廃棄物処理法上、ゴミの処分等の第一次的義務者が市町村(行政)にあることを示しつつ(同法第6条の2第1項)、行政に戸別収集の対応を求めることも検討するべきです。

最近では、自治会に加入していない住民が、自治会が管理するゴミ捨て場の使用を拒否されたことにつき、「所有権の濫用」であるとして、自治会を相手取って、ゴミ捨て場を使用する権利があることの確認等を求めている事案もあるようです。しかし、当該事案は、第1審と第2審でゴミ捨て場を使用する権利があるか否かについての判断が分かれており、現在上告中ですが、どちらの結論もあり得る予断を許さない状況にあります。

いずれにしても、自治会に加入しないままに自治会所有のゴミ捨て場を使用することは、法的にリスクがあります。場合によっては、弁護士が介入して自治会と交渉を行い、自治会に加入せずに自治会のゴミ捨て場を使用できるように調整することも考えられます。自治会との間でトラブルが生じた際には、是非弁護士にご相談ください。

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