ニューズレター


2014.Nov Vol.2

これからはあなたも宅地建物取引「士」!


不動産業界:2014.11.vol.2掲載

先生!
今度何やら法律が改正されて、宅地建物取引「主任者」だった僕が、宅地建物取引「士」に変わるそうですね!!僕も士業ということで、飲み屋とかでも先生なんて呼ばれちゃったりしてモテモテになるんですかねえ。でも、名前が変わって響きが良くなったのは分かるんですけど、具体的にはいったい何が変わるんですか?


名称以外では、大きく、
① 専門家として責任を持って業務処理する義務が明確となったこと
② 信用失墜行為の禁止
③ 暴力団員等の排除
④ 従業員の教育義務が新設されること
になりました。
ちなみに現在お持ちの宅地建物取引主任者証は継続して使用できますが、希望者には手数料と引き換えに宅地建物取引士証と交換してもらえるようです。

さらに詳しく

宅地建物取引業法の一部を改正する法律(以下、「改正後宅建業法」といいます。)が、今年(平成26年)6月25日に公布され、来年(平成27年)4月1日から施行されることになります。当該改正は、宅地建物取引主任者を宅地建物取引士と名称変更することで、専門家としての立場を強化し、かつ意識してもらい、不動産売買や賃貸における流通、及び依頼者等を保護することを目的としています。

以上のような目的から、宅地建物取引士という名称変更のみならず、①専門家としての責任を明確にするために、従来の宅建業法15条を変更し、「宅地建物取引士の業務処理原則」として、「専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に」業務を遂行する義務が規定されました(改正後宅建業法15条)。また、同条では、中古住宅の瑕疵やリフォーム等に関して保険業者やリフォーム業者等との連携を図るべく、「宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携」義務も規定されています。

また、②専門家としての責任及び品格を維持・強調するために、「宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」と規定され(改正後宅建業法15条の2)、また「必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない」とされました(改正後宅建業法15条の3)。我々弁護士も、「常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない」(弁護士法2条)とされており、宅地建物取引士も、士業として高度な責任、品格及び能力が期待されることになります。

そして、③不動産業界にも未だ関与しようとする暴力団員等との関係を断つこと等も含め、宅地建物取引士の免許交付の際の除外事由として、暴力団員である者(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者も含み、併せて「暴力団員等」と規定されています。)、及び暴力団員等がその事業活動を支配する者が規定されます(改正後宅建業法5条1項3号の2、同項8号)。 

さらに、④専門家として従業員を雇用等する者については、当該従業員にも同様に責任のある専門的な業務であることへ自覚を持って、遂行すべく、「従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない。」と規定されました。当該規定により、従業員の業務により生じた問題が、より一層宅地建物取引士の責任として認定されやすくなると考えられますので、従業員の教育には今まで以上に注意を払わなければなりません。

以上のように、名称の変更に伴い、専門家としての社会的役割を求められるようになったことから、高度な責任が生じることになり得ますので、専門家としてより一層の品格を維持しながら、不断の努力を重ねていかなくてはなりません。全国宅地建物取引業協会連合会も、法改正に伴い倫理規定や研修等の新設を予定しているようですので、当該規定を遵守し、研修等に参加することも求められるようになると考えられます。

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