ニューズレター


2020.Dec vol.73

水道料金の定額制って、水道の使い放題ってこと??


不動産業界:2020.Dec vol.73掲載

私は、アパート1棟の賃貸経営をしています。そのアパートの賃貸借契約においては、水道料金を一律定額で「月額1500円」としていました。水道料金は、賃貸人である私が、アパート一棟分の水道料金を支払うこととしており、その原資は入居者から集めた水道料金となっています。

入居者から集めた水道料金が、支払うべきアパート一棟分の水道料金に不足する場合には、私の財布から不足分を補うようにしていました。

この度、入居者の一人が、水を出しっぱなしにし、水道料金がいつもより高額になってしまいました。水を出しっぱなしにした入居者に、なぜそのようなことをしたのか聞いてみましたが、「水道は使い放題だ」といって話になりません。

水道料金の定額制は、水道の使い放題を意味するのでしょうか。できれば、入居者が使いすぎた分について、水道料金を請求したいのですが、それは可能でしょうか。


一般的に、居住用物件の賃貸借契約における水道料金の定額制は、「水道の使い放題」を意味するものではありません。

もちろん、賃貸借契約の締結時に、「水道は使い放題」と説明してしまった場合には、水道料金の定額制が、「水道の使い放題」を意味してしまいますので、そのような説明はしないようしましょう。

入居者が使いすぎてしまった分の水道料金については、異常な量の水道使用が認められる時期から、増額されてしまった分の水道料金を請求できる場合があります。

さらに詳しく

居住用物件における定額の水道料金は、通常、“生活に必要される程度”の水道使用を前提として設定されるものです。

つまり、水道を開栓して漏水のまま放置する等、生活で通常使用する水道使用量をはるかに超える異常な量の水道使用をすることは、予定されていないものと考えられます。

したがって、居住用物件の賃貸借契約において、水道料金の定額制が設けられていたといって、その賃借人が「水道の使い放題」を許されたものとはいえないと考えて差し支えないでしょう。

以上の理解を前提とすると、定額制の水道料金が設定された賃貸借契約においては、入居者は、“水道を使用するに際し、生活で通常使用する水道使用量をはるかに超える異常な量の水道使用をしない義務”を負っているものと考えられます。

入居者が、かかる義務に反し、異常な量の水道使用をした場合には、“異常な使用により増額した水道料金分”について、賠償する義務を負うこととなるといえます。

ここでいう“異常な使用により増額した水道料金分”については、厳密に考えると算出するのは困難なのですが、私が以前担当した類似の事件においては、入居者の異常な水道使用が始まった時期の直近1年間の平均値を超えた分を、“異常な使用により増額した水道料金分”として主張しました。

当該事件においては、その主張が全額認められ、金200万円以上の賠償請求が認められました。

なお、入居者の上記損害賠償責任がどの範囲で認められるかについては、賃貸借契約締結に至る経緯や、異常な水道使用がなされた経緯等によりその内容が大きく変わるものと考えられますので、水道使用についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。

水道料金の定額制が、一般的には「水道の使い放題」を意味しないことは、これまで説明してきたとおりですが、契約の内容は、互いの合意により変わり得るものです。

賃貸借契約の締結時点において、「水道料金は、どれだけ使っても定額ですよ」と説明があり、かかる説明を前提に賃貸借契約が締結されてしまえば、賃借人が「水道の使い放題」を許されてしまうといった事態が生じてしまいます。

本件のような賃貸借契約にまつわる細かいルールについては、“言った言わない”の水掛け論となってしまうケースが多いため、無用な争いを避けるためにも、水道料金の定額制を導入する際には、賃貸借契約書において、水道使用のルールについて明記しておくべきでしょう。

アーカイブ

ALG&Associates
Lawyers

弁護士法人ALGの所属弁護士紹介になります。

所属弁護士一覧